はじめよう経済学+(Plus)

授業一覧

 「はじめよう経済学+(Plus)」は全10回の授業になります。「はじめよう経済学(本編)」の続編です。

第1講市場(続)1時間33分
第2講独占55分30秒
第3講外部不経済58分32秒
第4講公共財52分20秒
第5講自由貿易1時間5分
第6講AD-AS分析(1)1時間14分
第7講AD-AS分析(2) 44分04秒
第8講マンデル=フレミング・モデル(1) 1時間20分
第9講マンデル=フレミング・モデル(2)1時間14分
第10講経済成長論入門1時間19分

第1講 市場(続)

 市場需要曲線や市場供給曲線の導き方を学びます。また、従量税の余剰分析についても解説します。

・ 動画授業を見る(計1時間33分)

1.市場需要曲線の導出38分57秒
2.市場供給曲線の導出20分00秒
3.従量税20分45秒
4.税の転嫁14分01秒

・ 授業資料のダウンロード

授業スライドノートなしノートあり
小テスト問題解答

・ みんなの質問

※ 「みんなの質問」はYouTubeのコメント欄に質問をしていただいたものです。詳しくはこちら

クリックして表示(質問5件あり)
・ 授業スライド16で、なぜ課税前の供給曲線を基準に生産者余剰を考えるのでしょうか?シフト後の供給曲線より上側が、生産者余剰になるかと思いました。
(回答)
 受取価格(生産者価格)は税を含まない値になりますので、生産者余剰を計算する際の供給曲線も、税を含まない課税「前」の供給曲線で考える必要があるのです。
 それに対して、授業スライド17では、P*の水準を用いて生産者余剰を計算していますが、この場合のP*は税を含む値になりますので、生産者余剰を計算する際の供給曲線も、税を含む課税「後」の供給曲線で考えることになるのです。

・ 授業スライド14の真ん中のグラフの切片p=2は、企業Bの操業停止点における価格pと同じになりますか?
(回答)
 私にとっては意外な質問でした。(私には、この縦軸切片が操業停止点に対応しているという発想がありませんでした)
 確かに、考えてみるとこのグラフの座標(0, 2)は操業停止点になっており、P=2が操業停止点における価格と考えることができます。そのように考えても良い理由は、P≦2のとき企業Bは操業を停止(生産量=0)するためです。

・ 完全競争市場の供給曲線に縦軸の直線部分(縦軸の操業停止点に満たない価格)が含まれるのは何故でしょうか?操業停止点に満たないので、企業は生産を行われない(供給量ゼロ)。そのため、供給曲線には含まれないと考えました。
(回答)
 これは気になる方も多いのではないかと思うご質問です。
 まず、操業停止点とは個別の企業に関する個別供給曲線における考え方だとご理解ください。企業によって固定費用の額は異なりますので、企業ごとに操業停止点の場所は異なります。
 そのため、これらの個別供給曲線を集計した市場供給曲線では操業停止点の位置が特定できないのです。
 そのため、完全競争市場における市場供給曲線では操業停止点は通常考えません。個別供給曲線でしたら本当は操業停止点を考えなければなりませんので、それを考えずに直線としてしまっているケースでは簡単化のために操業停止点を無視しているとお考え下さい。

・ 従価税のときの税収の範囲がわかりません。今回の動画「従量税」における「別の書き方」の箇所(生産者余剰の下の部分)は、従価税では台形になります。そのため、税収と台形が一致しないのですが、一致しないことは合っているのでしょうか?
(回答)
 その通りで従価税の場合、それらの面積は一致せず、税収は台形の面積になりません。
 もし仮に台形が税収になる場合は、次のように考えなければならないことになります。(以下の数字は適当です)
 1つ目の生産で5円を政府に払い、2つ目の生産で6円を政府に払い、3つ目の生産で7円を政府に払い、…というように、増産ごとに政府に支払う税が増えていくのであれば、台形が税収になります。
 しかし、従価税(例:消費税)だとそのようにはなりません。10%の従価税だと、100円(税抜)の商品は110円になり、何個作ろうが100円(税抜)の商品は110円になるのです。(仮に、100円(税抜)の商品を20個作ると税収は10円×20個=200円ですね)
 このような理由から、従価税の税収は台形の面積(生産者余剰の下の部分)にはならないのです。

・ はじめよう経済学+(Plus)では問題集の制作予定はありますか?
(回答)
 はじめよう経済学+(Plus)に関しては、問題集を作る予定は今のところありません。各回の小テストの分量を増やすことで対応できればと考えています。

第2講 独占

 独占企業の利潤最大化について学びます。また、価格差別についても解説をします。

・ 動画授業を見る(計55分30秒)

1.総収入と限界収入18分14秒
2.独占企業の利潤最大化24分49秒
3.価格差別12分27秒

・ 授業資料のダウンロード

授業スライドノートなしノートあり
小テスト問題(作成中)解答(作成中)

・ みんなの質問

クリックして表示(質問6件あり)
・ 独占の具体例としてアーティストのグッズとかは当てはまりますか?普通のシャツと比べてアーティストのライブの記念品のグッズ(例えばシャツ)は特段高いので、独占であると言えますよね?
(回答)
 そのように解釈をされて良いでしょう。
 あるアーティストのライブ記念Tシャツをたくさんの企業が作って売れるとなると価格は下がってしまいますが、実際にはレコード会社の発注によって独占的に供給されているされているのでしょうから、独占と考えて良いですね。

・ 需要曲線の傾きを2倍にしたら、限界収入が導出される直観的な理由を教えてください。
(回答)
 自明なくらい直観的な理由はないのですが、理解のヒントになるようなことを書かせていただきます。
 需要曲線(P=a-bx)より、生産量xが1つ増えると、価格Pはbだけ減少することが分かります。つまり、生産量xが1つ増えるごとに、総収入TR=P・xは、
①P・x → ②(P-b)・(x+1) → ③(P-2b)・(x+2)
と変化していく訳です。
 これらの式の括弧を外しておくと、
①P・x
②P・x+P-b・x-b
③P・x+2P-2b・x-4b
となります。(①~③はすべて総収入を表していることに気をつけてください)
 生産量xが1つ増えたとき、①→②で、総収入はP-b・x-b(=②-①)だけ増えているので、限界収入は
  P-b・x-b …(*)
ということです。
 そして、さらに生産量xが1つ増えたとき、②→③で、総収入はP-b・x-3b(=③-②)だけ増えているので、限界収入は
  P-b・x-3b …(**)
ということになります。
 したがって、(*)から(**)にかけて、限界収入は-2b(=(**)-(*))だけ変化しているのです。これこそが限界収入(MR=a-2bx)の傾きが-2bであることを表しているのです。(限界収入曲線の傾きとは、生産量xが1つ増えたときに限界収入がどれだけ変化するのかということです)
 つまり、①P・xから②(P-b)・(x+1)にかけての総収入の変化よりも、②(P-b)・(x+1)から③(P-2b)・(x+2)にかけての総収入の変化の方がずいぶんと大きいのです。
 それは、②と③の差が、①と②の差よりもより大きいことは、③(P-2b)・(x+2)の式の形を見ても明らかです。(-2bと+2がかけ算される訳ですから)
 以上のことから、感覚的にも、生産量xを増やしていけばいくほど、限界収入がより減少していくことが分かるのです。(その減少の程度は、生産量xが1つ増えたときに価格が下落する程度(b)の2倍に(計算上)なっているということです)

・ 独占利潤とラーナーの独占度を求めるにはどうしたらいいのでしょうか?
(回答)
 独占利潤やラーナーの独占度は、経済学用語集の方で扱う予定ですが、ここでも簡単に解説させていただきます。
 次の手書きの資料(以下URL)をもとに説明していきます。
https://introduction-to-economics.jp/wp-content/uploads/2021/06/note20210616.pdf
 まず、独占企業の利潤を「独占利潤」といいます。
 手書きの資料には、授業スライド13に独占企業の平均費用曲線ACを加えた図が描かれています。このようにAC曲線があれば総費用TCが分かりますので、AC曲線を書き加えたというわけです。
 あとは、図で書いたように独占利潤を求めてください。
 次に、ラーナーの独占度も手書き資料のような式で書くことができます。
 ラーナーの独占度は独占の強さを表す指標でして、この値が大きければ大きいほど、独占の度合いが強いということになります。
 例えば、完全競争市場とは独占状態からは最もほど遠い状態ですので、独占の強さ(ラーナーの独占度)が0になるはずです。
 完全競争市場においては、価格Pの値が限界費用MCの値と等しくなりましたので、P=MCが成り立つということでした。
 これをラーナーの独占度の式に代入すると、分子が0になりますので、
  (P-MC)/P=0/P=0
 このように、完全競争市場においてはラーナーの独占度が0であることが分かります。
 また、独占市場においては、価格Pの値が限界費用MCの値よりもどれだけ大きくなるかで、独占の度合いを表しているということになるのです。(P>MCで、このPとMCの差が開けば開くほど、独占の度合いが強くなるということですね)
 ところで、ラーナーの独占度は、1/ε_D、つまり、需要の価格弾力性の逆数で書けることも知られています。
 これは、ε_Dの値が小さいときに、ラーナーの独占度が大きいというわけですが、ε_Dの値が小さいとは、値上げに対して需要があまり減少しない、言い換えると、この企業が作っている財と競争関係にある財(代替的な財)があまり存在していないということを表しています。つまり、需要の価格弾力性が小さいということは、独占の度合いが強いと解釈をすることができるのです。

・ ミクロ経済学の教科書を読んでいると、需要曲線が完全競争市場の企業では水平になっていて、独占企業は右下がりの需要曲線になっていました。これはどうしてでしょうか?
(回答)
 確かにそこは混乱しやすい点ですね。
 ご指摘のように、完全競争市場での企業が直面する需要曲線が水平線として書かれているケースがあります。
 実は、私の動画授業でも水平線となる需要曲線は(こそっと)登場しています。はじめよう経済学+(Plus)「第1講 市場(続)」の講義スライド10(タイトル「(復習) 利潤最大化」)をご覧ください。ここには価格P*の高さで赤い水平線が書かれていますね。この赤い水平線が需要曲線なのです。より正確には、「個別企業が直面する需要曲線」と呼んだ方が良いでしょう。(特に決まった正式名称はありません)
 つまり、この需要曲線は通常の(市場)需要曲線とは異なるのです。(「第1講 市場(続)」で学んだ個別需要曲線とも異なります)
 「個別企業が直面する需要曲線」とは要するに、ある1つの企業にとっても需要曲線というイメージになります。どういう意味かというと、先程の講義スライド10において、生産量はxに決まりますが、x*はこの企業の生産量(供給量)でもあり、この企業の財を購入する消費者の需要量にもなるのです。
 このように、赤い水平線には需要曲線としての役割もあるため、「(完全競争市場において)個別企業が直面する需要曲線」と呼んでも良いことになるのです。
 また、独占市場においては、個別企業が独占企業そのものになりますので、独占企業が直面する需要曲線=市場需要曲線になります。なので、独占企業が直面する需要曲線は右下がりの市場需要曲線となっているのです。
<補足>
「個別企業が直面する需要曲線」を「個別需要曲線」と呼んでいる本もありますのでご注意ください。

・ 完全競走市場において、企業がプライステイカーとして価格Pを受け入れるしかないとのことですが、この経済的解釈が今一釈然としません。
(回答)
 企業がプライステイカーとして価格を操作することができない理由については次の2つのポイントがあります。
①完全競争市場において、価格は市場で決まる。(需要と供給のバランスで価格が決まると考えるのが基本的な考え方であるため、企業が価格を自由に変更できてしまうと、この考え方との整合性が崩れてしまうことになります)
②完全競争市場では、ある財を生産する企業はたくさんいるため、1つの企業がどれだけたくさん生産しても、もしくは一気に減産してもその財に対する市場全体の供給量には影響を与えないため、市場価格を動かすことができない。
 プライステイカーを考えることの経済学的解釈は以上になりますが、プライステイカーを仮定することの意味としては分析を簡素化するといった役割も大きいです。
 完全競争市場については、はじめよう経済学「第6講 費用」のその①の動画でも解説しておりますので、よろしければご覧ください。

・ 完全競争市場でも、(売れる売れないは置いといて)企業が価格(売る値段)を自由に決めることはできるのではないでしょうか?
(回答)
 いえ、完全競争市場では、企業は価格を自由に決めることが出来ないと考えます。
 そのような企業は、市場で決まった価格を受け入れた上で、その価格で販売すると想定します(企業はプライステイカー(価格受容者)という存在になります)。また、市場で決まった価格で販売しますのですべて売れると考えます。
 これが現実的か非現実的かという議論は、また別の話になります。(感覚としては正直、非現実的ですよね)
 ひとまずこのような最も単純な経済モデルを考えて議論をスタートするということに価値がありますので、より複雑な議論はさらにその先の内容だとお考えいただければと思います。

第3講 外部不経済

 外部性について学びます。外部不経済とピグー財、外部経済とピグー補助金について解説していきます。

・ 動画授業を見る(計58分32秒)

1.外部不経済28分56秒
2.ピグー税8分51秒
3.外部経済20分45秒

・ 授業資料のダウンロード

授業スライドノートなしノートあり
小テスト問題(作成中)解答(作成中)

・ みんなの質問

クリックして表示(質問8件あり)
・ 限界外部費用MEC(=SMC-PMC)と等しいピグー税率が課されるからこそ、集計時にキレイに余剰が相殺されるのですか?
(回答)
 授業でご説明したように「外部不経済の額」と「ピグー税による税収」が等しい場合には、これらがキレイに相殺されることになります。
 ところで、このようにキレイに相殺されるケースというのは、PMC曲線とSMC曲線が平行である場合のみになります。
 PMC曲線とSMC曲線が平行でないような、より一般的なケースも考えることができるのですが、この場合には上記のようにキレイに相殺されませんので注意しなければなりません。

・ 果樹園と養蜂場に関して、養蜂場視点ではちみつが多く取れるというメリットと、果樹園視点では授粉作業を蜂が自動的にやっているというメリットで、両者ともにメリットがある場合は政府が介入せずともお互いに生産量を増やし、結果的に最適な生産量になるという風に考えたのですが、そんなことはないのでしょうか?
(回答)
 外部経済が生じている状況では、最適な生産量が実現しているはずで、死荷重が生じている理由が感覚的に理解しづらい、というご質問かと思います。(確かに、外部経済のときに死荷重が生じる理由は直観的には分かりづらいですよね)
 ただ、果樹園と養蜂場のケースでも、やはり最適な生産量は実現していないと考えるべきなのです。
 まず、「最適な生産量」を定義しなければいけません。
 このストーリーにおいて、「果樹園の利潤」と「養蜂場の利潤」の合計を最大化するような生産量を、最適な生産量としておきます。(合計の利潤(生産者余剰)の他に、果物やはちみつを購入する側の消費者余剰を考慮に入れても構いませんが、議論の本質を捉えるために果樹園と養蜂場のみを考え、消費者は考慮しないものとします)
 ここで、果樹園の経営者と養蜂場の経営者は別人であると考えると、果樹園の経営者は果樹園のみの利潤を最大化するように(果物の)生産量を決定し、養蜂場の経営者は養蜂場のみの利潤を最大化するように(はちみつの)生産量を決定します。
 では、果樹園が自社の利潤を最大化し、養蜂場が自社の利潤を最大化すれば、合計の利潤も最大化されるかと言われれば、実は、そうならないのです。
 その理由は双方に外部経済が生じているからです。
 外部経済が生じているときには、果樹園の経営者は、自社(果樹園)の利潤を少し落としてでも、多く生産した方が果樹園と養蜂場の合計の利潤をより多くできるのです。(果樹園の経営者は自社の利潤しか考えていないので、外部経済による養蜂場の利潤の増加は一切考えていません。そこで、果樹園の経営者が、外部経済による養蜂場の利潤の増加も考慮するようになったとすれば、自社(果樹園)の利潤が最大となる生産量よりも多くの生産をすべきだということになるのです)
 逆に、養蜂場の経営者も、自社(養蜂場)の利潤を少し落としてでも、多く生産した方が果樹園と養蜂場の合計の利潤を多くできるのです。
 このように、外部経済が生じているときに、果樹園と養蜂場の合計の利潤を最大化するためには、各社が利潤最大化をする際の生産量よりも多く生産する必要があるのです。
 したがって、外部経済が生じているときに、政府が何ら政策をせずに、果樹園の経営者と養蜂場の経営者に生産量の決定を任せていては、各社の生産量が過小となってしまうのです。

・ 授業スライド10のグラフで、E*、PMCとDの交点、PMCのx*上の点の3点を頂点とする三角形は死荷重にならないのはなぜでしょうか?ピグー税が従量税だとしたら、「第1講 市場(続) ③」の授業スライド16で見たようなグラフになると思いました。
(回答)
 死荷重の定義を確認される必要があります。
 死荷重とは、最大の総余剰から減った余剰のことです。そして、最大の総余剰がピグー税を導入した際に実現する総余剰になるのです。
 ちなみに、本来は、最大の総余剰がどこであるかの説明は次のリンク先(手書き資料)のように説明するのが正しいです。リンク先を見ていただくと、最大となっている総余剰がどこであるか、また、ピグー税を導入したケースと総余剰が同じになっていることが確認できるかと思います。
https://introduction-to-economics.jp/wp-content/uploads/2021/05/note20210513.pdf
 このように、ピグー税を導入したケースでは、そもそも総余剰が最大化されているので、死荷重の定義から、死荷重は生じないのです。
 また、ピグー税という従量税をかけているにも関わらず、死荷重が出てこない理由は、ピグー税をかけることで企業の生産量が減り、そのおかげで外部不経済が大きく減ってくれるからです。従量税が本来持っている非効率性もあるにはあるのですが、それ以上に外部不経済が減ってくれるので、トータルとしては良い影響が現れるのです。

・ 需要曲線とSMC曲線が交わるE*で生産することにより総余剰は最大化される、ということがどうしてもわかりません。なぜE*で生産することが大切なのでしょう?
(回答)[直前の質問に対する回答も関連しています]
 核心をついたご質問かと思います。
 外部不経済が存在しない完全競争市場において、総余剰が最大となるケースとはどのような状況だったのかを思い出してみてください。それは、財を生産する際に生じるコストを考慮して得られた限界費用曲線と、需要曲線との交点で生産することで総余剰が最大化されていました。
 それに対して、外部不経済が存在する場合は、限界外部費用というコストが新たに生じる訳ですが、完全競争市場の状況と同じように考えると、企業の限界費用と限界外部費用の合計が、財を生産する際に生じているコストになっているわけです。限界外部費用というコストまで考慮した社会的限界費用曲線と需要曲線との交点で生産することで総余剰が最大化される、というのが直観的な理解になるのです。
(言い換えると、完全競争市場では、生産で生じるすべての費用が限界費用曲線に含まれ、その結果、総余剰が最大化されていましたが、外部不経済が発生している場合は、限界費用と限界外部費用の合計が財を生産するためのすべての費用であり、それを表したSMC曲線と需要曲線が接するE*で生産することにより総余剰が最大化されるということです)

・ 外部経済において政府の介入がない場合に、生産量はX0でE0が実現するにも関わらず、X0よりも多い生産量の部分で死荷重ができているのはなぜなのでしょうか?なぜ死荷重ができるのかがわかりません。
(回答)
 とても良いご質問です。
 死荷重とは、「最大の総余剰」からどれだけ余剰が減ってしまうかを表しています。「最大の総余剰」がどこに相当するのかというと、次の手書き資料の一番下の図の総余剰が「最大の総余剰」です。
https://introduction-to-economics.jp/wp-content/uploads/2022/03/note20220310.pdf
 つまり、E0で生産を行ってしまうと、E*で生産を行った場合と比べて、総余剰が小さくなってしまっていることが分かるのです。

・ 現実問題として、ピグー税として政府に徴収された税金は、公害によって生じた死荷重を打ち消す事業に使われたり健康被害の補償に使われたりして打ち消されるのでしょうか?
(回答)
 ピグー税として徴収された税金の使い道についてですが、まずは、経済学の理論としては、使い道に問わず、ピグー税は総余剰を最大化できることになります。
 では、現実はどうかということですが、ピグー税に比較的に近いものが、日本で2012年10月に導入された「地球温暖化対策のための税」、いわゆる環境税です。
 この税収は再生可能エネルギーの普及のための投資等に使われています。この税収が健康被害への補償に使われているといった事実はありません。

・ ピグー補助金に関して、A社が増産するとB社にメリットがあり、B社が増産するとA社にメリットがあるという相互に他社が増産した場合に得するという場合はどちらに補助金を出すことになるのでしょうか?
(回答)
 X社からY社に外部経済を与える場合、外部経済を与える側(X社)にピグー補助金を与える必要があります。
 ご提示いただいた例のように、双方に外部経済を与え合っているケースでは、両企業にピグー補助金を与える必要があるということになります。

・ 独占市場と完全競争市場ではピグー税の大きさは異なりますか?
(回答)
 興味深いご質問だと思いました。独占市場において外部不経済が生じているケースを考えるということですね。
 結論としては、独占市場と完全競争市場ではピグー税の大きさは異なります。その理由は次の通りです。
 外部不経済が生じている場合には生産量が過大になりました。それに対して、独占市場では完全競争市場の場合よりも生産量が小さくなりました(第2講)。
 つまり、外部不経済と独占市場が組み合わさることで、ピグー税を課す水準を小さくしても良いということになるのです。なぜなら、独占市場であることで生産量が小さくなっているので、おのずと生じる外部不経済が小さくなってくれているからなのです。
 結論としては、独占市場で外部不経済が生じている場合は、(完全競争市場の場合と比べて)ピグー税の水準を小さくできるということになります。

第4講 公共財

 公共財について学びます。公共財の供給量をどのように設定すべきかについて解説していきます。

・ 動画授業を見る(計52分20秒)

1.公共財の特徴18分48秒
2.個別需要曲線の垂直和25分19秒
3.サミュエルソン条件8分13秒

・ 授業資料のダウンロード

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・ みんなの質問

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・ 医療は公共財ですか?
(回答)
 医療は私的財になります。
 世間一般では医療、介護、教育などを公共財ということもありますが、これは公共性(広く社会一般の利害にかかわる性質)が高いと言っているに過ぎません。
 経済学でいう公共財と世間一般でいう公共財は若干異なっていることにご注意ください。

・ Amazonプライムなどはクラブ財にあたると思うのですが、YouTubeは何財にあたるのですか?
(回答)
 スマホやパソコン等を持っている限り利用できると考えれば、クラブ財だと考えられなくもないと思います。
 しかし、国民の大半がスマホやパソコンを持っていますので、スマホの保有やその料金の支払いは別問題だとすれば、YouTubeは純粋公共財になるかと思います。(通常の感覚だと、YouTubeは(純粋)公共財だと答える人が多いでしょう)
 ただ、YouTubeが何財になるのかと単に分類すること自体はあまり重要ではなく、それを純粋公共財としてあてはめたときに、純粋公共財の理論がYouTubeに当てはまるのかどうかということの方が大切なのかもしれません。

・ 共有地の悲劇は、市場の失敗と考えてもいいですか?
(回答)
 共有地の悲劇も市場の失敗に含まれます。
 コモンプール財(共有資源、共有地、コモンズ)は、市場メカニズムに任せても、乱獲などが起きることで最適資源配分にはなりませんので、市場の失敗と考えることができます。

・ 授業スライド7で、なぜ20個のときのPが21個目の説明になるのか腹落ちしませんでした。(って20年くらい前にも同じように思ったような気がします)
(回答)
 確かに、x=20のときの話をしているはずなのに、x=21に関する話が出てくると混乱するお気持ちは分かります。
 次の簡単な例を考えてみてください。
 例えば、y=2x+1という式があった場合に、「x=3におけるグラフの傾きはいくつか?」という問題があったとします。
 もちろん、(直線なので傾きは一定で)答えは「2」です。
 では、その傾き2の解釈は?と聞かれると「x=3から右に1進んだときに上に2あがる」と答えますよね。
 つまり、傾きを解釈する際は横軸方向に1だけ進むことを仮想的に考えることになるのです。
 限界効用や限界便益、限界費用といった概念は、元のグラフの(接線の)傾きになっていますので、x=20での話をしているのに「21こ目を消費したら…」といった解釈になるのです。

第5講 自由貿易

 自由貿易と関税について学びます。有名な比較生産費説ついても丁寧に解説していきます。

・ 動画授業を見る(計1時間5分)

1.自由貿易の余剰分析18分10秒
2.関税の余剰分析6分23秒
3.比較生産費説40分39秒

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第6講 AD-AS分析(1)

 AS曲線を理解するために労働市場を学びます。古典派とケインズ派の違い、失業の分類についても学んでいきます。

・ 動画授業を見る(計1時間14分)

1.古典派とケインズ派9分11秒
2.労働市場20分46秒
3.失業の分類24分07秒
4.AS曲線20分45秒
関連1.古典派の第一公準34分00秒
関連2.古典派の第二公準17分05秒

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・ みんなの質問

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・ 古典派のAS曲線は「長期」を想定し、ケインズ派のAS曲線は「短期」を想定しているのでしょうか?
(回答)
 私の動画では、1年以内(もしくは1年程度)を短期、1年以上を長期と説明しましたが、短期や長期には様々な考え方があります。
 例えば、次の本
  齊藤誠・岩本康志・太田聰一・柴田章久(2016)『マクロ経済学 新版』有斐閣、pp.130, 326
を参考にすると、1年程度の短い期間を「短期」、1~5年を「中期」、5~10年を「長期」とする考え方を紹介しています。
 さらに、ケインズ派のAD-AS分析は物価には伸縮性があるが、賃金には伸縮性があまりない「中期」の分析、 古典派のAD-AS分析(特に、労働市場の考え方)は物価も賃金も伸縮的である「長期」の分析であると位置づけています。
 そのため、ケインズ派のAS曲線は中期モデルであり、古典派のAS曲線は長期モデルであると考えられるとよいでしょう。

第7講 AD-AS分析(2)

 AD-AS分析を学びます。財政政策と金融政策が経済に与える影響をより深く理解します。

・ 動画授業を見る(計44分04秒)

1.AD曲線の導出12分26秒
2.AD曲線の右シフト9分44秒
3.AD-AS分析21分54秒

・ 授業資料のダウンロード

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・ みんなの質問

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・ 財市場均衡条件で用いられたY^Sと今回のAD-AS分析におけるASはどちらも『総供給』とされていますが、本質的には違うものではないかと引っかかってしまいました。実際のところどうなのでしょうか?
(回答)
 財市場で登場する総供給Y^Sと、AD-AS分析で登場するAS曲線が、「同じもの」か「違うもの」かということでしたら、使用する局面が異なっていますのでやはり「違うもの」です。
 財市場で登場したY^Sは、Y^Dと等しくなるという役割しかなく(有効需要の原理)、「実際にY^Sの分だけ生産できるのか?」ということに対して根拠がありません。それに対して、AS曲線の導出の際に登場するYは、「労働という生産要素を、これだけ用いてYだけ生産することができる」といったように、生産が可能だという根拠が含まれています。そのような違いを考慮すれば、総供給Y^Sと総供給(AS)曲線は「違うもの」と考えてよいでしょう。

・ AD曲線を導出する際に財市場も考えますが、財市場には総供給Y^Sが登場します。「総需要(AD)」曲線を導く際に、総供給Y^Sが出てくることに違和感があります。
(回答)
 AD曲線は、財市場均衡条件(Y^S=Y^D)と貨幣市場均衡条件(Ms=L)から導出されました。このことから、AD曲線には、財市場の情報である総供給Y^Sと総需要Y^Dの情報が両方が入っている訳です。つまり、「総需要(AD)」曲線と言っている割には、総供給Y^Sの考え方が入り込んでいる訳ですね。
 ただ、ケインズによる財市場の考え方は有効需要の原理ですので、総需要Y^Dに等しくなるように総供給Y^Sが決まると考えます。そのため、実質的な主導権は総需要Y^Dにあるわけです。
 直前の質問に対する回答と同様の話になりますが、総需要Y^Dも総需要(AD)曲線も登場する場面が異なっていますので、やはり違うものと考えておかれるのがよいでしょう。

第8講 マンデル=フレミング・モデル(1)

 マンデル=フレミング・モデルを学ぶための基礎知識を学びます。為替レート、国際収支について理解を深めていきましょう。

・ 動画授業を見る(計1時間20分)

1.為替レート20分9秒
2.外国為替市場23分11秒
3.国際収支13分59秒
4.45度線分析(開放経済)23分28秒

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・ みんなの質問

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・ 限界消費性向+限界輸入性向=1でしょうか?
(回答)
 「限界消費性向+限界輸入性向=1」とは限りません。授業の数値例ではたまたま合計して1になったとお考え下さい。

第9講 マンデル=フレミング・モデル(2)

 本格的にマンデル=フレミング・モデルを学びます。まずは、資本移動やBP曲線から理解を深めていきましょう。

・ 動画授業を見る(計1時間14分)

1.資本移動26分22秒
2.BP曲線16分53秒
3.IS-LM-BP分析①16分9秒
4.IS-LM-BP分析②14分59秒

・ 授業資料のダウンロード

授業スライドノートなしノートあり
小テスト問題(作成中)解答(作成中)

・ みんなの質問

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第10講 経済成長論入門

 経済成長論の最も基本的なモデルであるソロー・モデルを学んでいきます。経済が成長するメカニズムについて考えていきましょう。

・ 動画授業を見る(計1時間19分)

1.資本蓄積21分29秒
2.コブ=ダグラス型生産関数21分7秒
3.ソロー・モデルの構造6分34秒
4.ソローの基本方程式①12分7秒
5.ソローの基本方程式②18分42秒
補講.Excelでソロー・モデル14分18秒

・ 授業資料のダウンロード

授業スライドノートなしノートあり
小テスト問題(作成中)解答(作成中)
データ(補講用)Solow.xlsx

・ みんなの質問

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